『その仕事、全部やめてみよう』遊び心×スピード×安定感の仕事術
『その仕事、全部やめてみよう』は2020年7月発売で新しくはないが、最近X経由で知った著者のnoteが興味深かったので、すぐに本書を購入して読み始めた。
小野和俊さんは、サン・マイクロシステムズ→ベンチャー起業→資本提携したセゾン情報システムズCTO→クレディセゾンCTOと、身を置く環境のふれ幅が大きい。肩書は『プログラマー×起業家×CTO』で、とても”強い”がエリートというより叩き上げだ。
セゾン情報システムズにベンチャーの文化を持ち込んで内製チームをつくり、早々にプロダクトをリリースし成功させた。さらに、その内製チームを、ベンチャーとは対極にある老舗企業の情報システム部門と統合させた。
僕は金融機関のシステム開発経験があるので、この話は特に興味深く読んだ。金融機関は安定志向でベンチャーとは水と油なはず。この2つを”文化的に”統合したのは奇跡にすら思える。
他にも興味深いエピソードは多いが、第4章『「To Stopリスト」をいますぐ作る』に出てくるプログラマー的な生産性を上げる方法の話は、いちいち頷きながら読みすすめた。くり返し処理、ペアプロ、バグの切り分け、オフィスの「遊び」(バランスボール、電動昇降デスク、曲面ディスプレイ)、会社に炊飯器など。どれもプログラマー的な”あるある”で、思わずにやける。
さらに次の章『職場は「猛獣園」である』で、プログラマーとしてのうなずきはピークに達する。
他にも、いろいろハイライトしたので、メモとして列挙しておく。
- 方法論を乱用しない
- ブロックチェーンを体験するためにビットコインを配布
- ITは遊び心でできている
- DCAP
- あるものは使う。ないものは作る
- これから来そうな技術は身につけ使うべき時が来るまで使わない
- バイモーダル戦略
- 稟議書の呪縛から逃れる
- ラストマン戦略
- 遊び人が賢者になる日
- 無謀、勇敢、臆病
- 最強のワンオブゼムになるな
- エンジニア風林火山
- To Stopリスト
- 繰り返し処理を攻略する
- 人は見られるとカッコつけ、集中し、柔軟性が高まり、ノウハウを提供する
- ビールを飲むか、ワインを飲むか
- トラブルの総合百貨店
- 「一番近く」と「一番遠く」だけを見る
- 会社に炊飯器を持ってきていいですか?
- 職場は「猛獣園」である
- ひよコード(ピヨピヨ)
- 人を動かすコツは、相手を全力で理解すること
- 俺がやったほうが早い病の治し方
- 山田先生の教え
本書は終始、著者のプログラマー的な感性と遊び心にあふれ、どのエピソードも興味深く読ませてくれる。さらに、その文体から、プログラマーとしての遊び心や経営者としての厳しさは当然として、優しい人なのだろうと勝手に想像している。