『ChatGPT攻略』生成AI活用の”考え方”を学ぶ

ChatGPT攻略

本書は、ChatGPTの”神プロンプト”を紹介する本ではない。手っ取り早く精度の高いプロンプトを知りたい人には向かない。今後、急速に発展するであろうChatGPTをはじめとする生成AIを理解し、活用するための『考え方』が書かれている。生成AIが「どう考えるか」を知り、目的に合わせて「考えさせる」プロンプトを書けるようになりたい人にすすめたい。

考え方というと、めんどくさそうに思われるかもしれないが、その分書かれている内容は陳腐化しにくい。その中でも『第2章 生成AIの沿革』で紹介される『労働の枠組みを「入出力の複雑さ×ミスの許容可能度」で表した図』がとてもわかりやすく、一見の価値がある。

その図によると、生成AIがイノベーティブなのは、「入出力が不定形で、ミスが許容される」ホワイトカラーの領域を代替できるからだという。既存のプログラミングは「入出力が定形で、ミスが許容できない」分野のみを扱っていたので、生成AIが代替できる既存のホワイトカラー領域の広さ、つまり影響の大きさがわかる。

特にITエンジニアにとっては業界の将来像をイメージし、自分の専門性をどの方向に発展させるか考えるうえで重要な情報だと思うので、読んで損はない。ちなみに、第2章は、以下で無料公開されている。ありがたい。

Medium
AIはどのような仕事ができるようになったのか?ChatGPTで変わる「優秀な人材」 この怪文書は、情報処理学会が発行する情報処理2023年8月号に掲載された記事を、筆者が自ら転載したものです。

以下、特に参考になった考え方をピックアップする。

目次

【基礎編】愚者は知識を問い、賢者は議論をする

SNSなどでChatGPTを低く評価している人は、検索に使っていることが多い。現在のChatGPTは2021年9月までのWeb上のデータで学習したAIなので、当然ながら、それ以降の事象に対する質問の回答はデタラメになる。また、抽象度の高い(一般的な)情報に比較して、具体的なものに対する情報は少ないので、個人や個々の商品などに対する質問もデタラメな回答が多くなる。さらに、対象の知名度が低かったり、多くの人が言及していないものに対する情報も少ない。

生成AIは、検索エンジンの代わりではなく、議論するパートナーとして使うべき。基本的なことで認識していたけど、再確認できてよかった。

【基礎編】略語(頭字語)を考えてもらう

FIRE(Financial Independence, Retire Early)のように、英単語の各文字に意味を持たせ、全体として1つの意味になる語(頭字語/acronym)は多い。ChatGPTに『英単語』と『持たせたい意味』を与えて頭字語を生成する使い方が紹介されている。

使うシーンは少ないかもしれないが、面白い活用方法だと思う。

【応用編】専門用語を活用して、複雑な構造を出力してもらう

専門用語には厳密な定義があり大量の情報が詰まっている。そのため、プロンプトで活用すれば、少ないトークンで複雑な内容を正確に伝えやすく、ChatGPTからの回答も意図した構造で得られやすい。

本書では「リーンキャンバス」を例にしているが、この用語を使わずに同じ内容をChatGPTに伝えようとすると、それだけで膨大なトークンが消費されてしまう。専門用語を使うことの有効性は計り知れない。

まとめ

はじめに書いたように、本書は単なるプロンプトの事例集ではない。使い方のヒントとして事例を提示しつつ、そのケースで生成AIがどう考えるかが解説されている。考え方なので、当然古くなりにくい。基本を押さえるために、目を通して損はない1冊だと思う。

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この記事を書いた人

中野 裕のアバター 中野 裕 なかの情報技術 代表

なかの情報技術代表・ITコーディネータ。2002年に上京。多数の金融機関でシステム開発を経験した後、札幌にUターンして独立。経営管理(管理会計)、受注管理、購買管理、工場等の設備管理など、独立後は広範囲の案件に携わる。「ビジネスとITをつなぐ」ために、両者のコミュニケーションギャップを解消するため走り回ることも多い。

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