【ITコーディネータ】ケース研修と試験の記録

ITコーディネータケース研修と試験の記録

2025年度よりIT経営推進プロセスガイドラインが改訂(ver.3.1→4.0)されるそうです。試験内容やケース研修の内容も変更になるようなのでご注意ください。

2024年3月上旬にITコーディネータのケース研修が修了し、試験も無事に合格した。資格取得を検討する際に研修や受験の経験談を検索してもほとんどなく不安だったので、今後ITコーディネータの取得を検討する方向けに、私の経験を共有する。

目次

ITコーディネータとは

ITコーディネータの定義

ITコーディネータ協会のWebサイトには以下のように書かれているが、具体的に何をする人かがわかりにくい。

企業存続や組織の成長のために、変革構想立案からシステム導入・評価改善までを一貫して推進・支援し、IT経営とDXを実現するプロフェッショナル人材

特定非営利活動法人ITコーディネータ協会 ( https://itc-shikaku.itc.or.jp/get-itc/ )

言い直すとITコーディネータは『経営とITの橋渡し役』で、その支援範囲は、おおよそ以下になる。

  • 経営者が変革の必要性を認識する
  • 経営戦略を立案する
  • 経営戦略から業務改革およびIT戦略を立案する
  • IT戦略からITの調達、導入、利活用する
  • 上記のマネジメント全般

いずれも主体は企業(経営者)であり、ITコーディネータは支援者として振る舞うことが求められる。

認定制度

ITコーディネータになる(認定される)ためには、以下の2点をクリアする必要がある。

  • ケース研修の受講・修了
  • 試験の合格

クリアする順番は任意だが、私はケース研修を先に受講することをおすすめする。試験では「IT経営推進プロセスガイドライン」の知識が問われるが、テキストが理解しづらい。そこで、ケース研修に付属する動画(Eラーニング)で先に概要を把握する。その後でテキストを読むとスムーズに理解できることが理由だ。

また、試験勉強はガイドラインの暗記が中心になる。個人的には非常に苦痛な作業だが、研修でガイドラインを活用した経験や、グループディスカッションの記憶と結びつくと、暗記しやすい。

なお、「ITコーディネータ」は商標登録されているので、認定されていない人が名乗ると権利侵害と判断される可能性がある。

余談だが、ケース研修に申し込むと「IT経営推進プロセスガイドライン」がもらえる。私は知らずにAmazonで買ってしまい2冊持っている。試験勉強にはガイドラインが必須なので、この面でもケース研修を先に受講する方が合理的だと思う。

費用

最初に認定されるまでの費用は約26万円(税込み)、3年目以降の更新料が2.2万円(税込み)となる。

ケース研修:220,000円
試験   :19,800円
認定・更新:22,000円
※全て税込み

個人で払うには大きな金額なので、力試しに受けるタイプの試験ではないが、投資として考えられるなら価値はあると思う。

ケース研修

ITコーディネータ資格取得サイト
ケース研修 | ITコーディネータ資格取得サイト ケース研修とは、ITコーディネータ資格認定に必要となる研修プログラムです。あらゆる組織に適応可能なベストプラクティスであるIT経営プロセスを活用した活動を仮想企...

受講方法と提供資料

私はオンライン研修を選択したので、自宅で受講した。基本的なPC操作と、ZOOMが使えれば問題ない。

研修を申し込むと、研修用のWebサイト(ITCA Learn Portal)にアクセスできるようになる。ここに諸々の資料があるので、研修前に目を通しておく。また、『PGLの学習』というコンテンツがあり、IT経営推進プロセスガイドラインの解説動画を視聴できる。(動画の視聴も研修課題の1つ)

さらに、郵送で教材(ファイリングされた資料とIT経営推進プロセスガイドライン)が届く。

ケース

研修は「インテリアライフ社」という架空の中小企業を例に進めた。ストーリーは以下のように始まる。

インテリアライフ社の社長が融資の相談で銀行に行った際に、世間話から経営課題の話になり、融資担当者から中小企業振興社に相談することをすすめられた。窓口に出向きざっくばらんに経営課題を話したところ、後日専門家に詳しく聞いてもらうという話になった。ITコーディネータのあなたは、専門家としてインテリアライフに出向き、社長や役員からヒアリングすることにした。

企業概要はこんな感じ。

創業40年超
社長は2代目(創業者の息子)
業務分野は、インテリア製品の卸売業
売上高50億円
従業員は約100人(パート・アルバイト含む)
拠点は、東京(本社、営業所)、大阪、名古屋、福岡、物流センター

社長は外部環境の変化から変革の必要を感じており、『5年後の売上高2倍・営業利益3%』を目指す。この条件で、ITコーディネータとして何をすべきかを学ぶ。

設定は細かいところまで良く考えられていて、良い経験になった。

研修の流れ

研修の1日は、おおよそ以下の流れで進む。

  1. 前回のレポートを発表
  2. 講義(30分~1時間程度)
  3. グループディスカッション(30分~1時間程度)
  4. レポート課題の説明

1.はロールプレイ形式で行う。例えば「経営会議で、ITコーディネータとしてIT戦略を提案する」といったシーンが設定され、発表者だけでなく、その他の参加者も社長や営業部長などのロール(役割)が与えられる。発表後、それぞれの立場から質問することで理解を深めていく。

2.3.は何度か繰り返す。3名ほどのグループをつくり、ケースに対して講義で提示された内容をディスカッションする。例えば、インテリアライフの社内における問題点について、グループでディスカッションしながら列挙する。

日程

研修は6日間(各日AM9:30-PM6:00)で、事前課題とレポート提出があるハードな日程だった。さらに、私は4週で研修を終える”日程が圧縮された”コースを選んだので、体力的にも非常に消耗した。

●スケジュール(私の場合)
2/09(金):動画視聴、事前課題
2/10(土):研修1日目
2/11(日)-2/16(金):レポート課題、事前課題
2/17(土):研修2日目
2/18(日):研修3日目
2/19(月)-2/23(金):レポート課題、事前課題
2/24(土):研修4日目
2/25(日):研修5日目
2/26(月)-3/01(金):レポート課題、事前課題
3/02(土):研修6日目
3/03(日):レポート課題
—研修修了

3/04(日)-3/09(土):試験勉強
3/10(日):試験

自分で組んだスケジュールとは言え、仕事+研修で1か月間ほぼ休みがなくハードだった‥

試験

試験概要

試験はCBT方式の4択で、120分で100問が出題される。詳細は以下のリンクを参照してほしい。

ITコーディネータ資格取得サイト
ITコーディネータ試験 | ITコーディネータ資格取得サイト Tコーディネータ試験は、ケース研修の受講修了と合わせて、ITコーディネータ資格取得の条件となるもので、年間3回(各期間1か月程度)実施しています

勉強方法

まず、基本問題対策としてIT経営推進プロセスガイドラインを読み込んだ。本文は1度通読する程度で、あとは付録を中心に暗記に徹する。参考資料も出題範囲のようなので、目を通しておいた方がよさそう。(試験で出題されたかどうかは覚えてない)

ITコーディネータ試験はCBT方式のため過去問が公開されていない。そこで以下のサンプル問題で勉強した。間違えた問題を中心にテキストを読み返し、3周以上はしたと思う。

  • ITコーディネータ協会のサンプル問題
  • キーマンズネットが公開している問題

個人で作成・販売されているサンプル問題集も購入してみたが、問題の質がいまいちで、上記2つのサンプルを繰り返した方がいいと判断して使うのをやめた。

なお、基本問題はIT経営推進プロセスガイドラインを暗記することで対策できるが、応用問題は経験値が問われているので業務経験がないと難しいかもしれない。

受験当日

前半は基本問題、後半に応用問題が出題されるので、前半は1問/分より早いペースで解答しておき、後半に向けてバッファをつくった。サンプル問題からも、いくつか出題された。

雑感

ITコーディネータは、国家資格ではなく、業務独占できるわけでもない。さらに、知名度も低く、資格保有者も多くない。使えない資格と評されることもある。しかし、私のようなITエンジニアにとっては、(疑似的にだが)経営に関わるポジションで仕事をする貴重な機会になる。ケース研修を修了すると、見える景色が変わったように思う。

また、IT経営推進プロセスガイドラインは経営とITをつなぐフレームワークとして貴重だと思う。テキストだけでは理解しづらいが、ケース研修で講義とワークを繰り返すことで、一定の実践力が身に付く。また、研修内で配布される各種テンプレートも今後の仕事で重要なツールになると思う。。

金銭的・時間的に大変ですが、勉強する価値はある。

2025年度よりIT経営推進プロセスガイドラインが改訂(ver.3.1→4.0)されるそうです。試験内容やケース研修の内容も変更になるようなのでご注意ください。

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この記事を書いた人

中野 裕のアバター 中野 裕 なかの情報技術 代表

なかの情報技術代表・ITコーディネータ。2002年に上京。多数の金融機関でシステム開発を経験した後、札幌にUターンして独立。経営管理(管理会計)、受注管理、購買管理、工場等の設備管理など、独立後は広範囲の案件に携わる。「ビジネスとITをつなぐ」ために、両者のコミュニケーションギャップを解消するため走り回ることも多い。

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