ChatGPTで苦手な契約書チェックを2時間から10分に短縮した方法

ChatGPTで苦手な契約書チェックを2時間から10分に短縮した方法

重要な注意事項:
本記事は法務アドバイスを提供するものではありません
契約書の最終確認は、必要に応じて法務の専門家に依頼してください
AIは補助的なツールとして活用することを想定しています

早い、安い、安心できる契約書チェック方法は無いもんか―――

仕事を受注した喜びも束の間、その後には必ず契約手続きが待っています。1人で個人事業を営んでいる私には、身近に法務面を相談できる専門家はいません。当然、契約書のチェックは自分でやります。正直、契約書作成やチェックは時間もかかりますし、何度やっても不安しかありません…

  • 誤字脱字や条文の重複・抜け漏れがないか
  • 相手先が準備した契約書で自社が不利になっていないか
  • 専門用語や法律の慣習をどこまで理解できているのか

こうした不安を抱えながら、毎回同じような契約書でも微妙に違うので、何度も読み返していると気づけば2時間くらい経ってます。集中してチェックしているつもりでも、後から見落としに気づくこともあります。私と同じような不安に心当たりがある方は少なくないのではないかと思います。

そんな「めんどくさい」「不安だ」という契約書チェックを効率化するために、私が試したのがChatGPTでの契約書チェックです。試してみると、これまで2時間はかかっていたチェックが10分ほどで済むようになりました。たとえば、次のようなメリットがあります。

  • 誤字脱字や表現のゆれを素早く指摘してくれる
  • 契約書の「あたりまえ」はChatGPTに質問するとすぐに解説が出てくる
  • リスクがないか何度も読み返す必要が減り、心理的な不安が大幅に軽減される

もちろん、ChatGPTだけにすべてを任せるわけにはいきませんが、大幅な時間短縮やストレス軽減に貢献してくれるのは事実です。契約書の内容が一般的であるほど、その効果はより顕著に感じられると思います。

この記事では、私と同じように「契約書チェックが面倒」「法務の知識が足りない」「コストをできるだけ抑えたい」と感じている中小企業の経営者や個人事業主の方に向けて、AIを活用した契約書チェックの進め方を紹介します。法的リスクに対する意識を高めつつ、ChatGPTを導入することでどのような効果が得られるのか、実体験も交えながらお伝えします。

目次

中小企業や個人事業主の現実はこんな感じ?

中小企業や個人事業主の場合、契約書チェックといっても大企業のように専門部署があるケースは稀ではないでしょうか。個人事業主の私も法務面は当然すべて自分で対応しますが、時間も手間もかかるし、何度やっても苦手です。ここでは、一般的な中小企業や個人事業主が直面しがちな課題やリスクを整理してみます。

契約書チェックの現状

1. 時間がない!人がいない!

会社の規模が小さいほど、法務に割けるリソースが限られます。専任の担当者などいるわけもなく、経営者自身が契約書チェックを行う場合も多いはず。そのため、本業の合間で契約書を確認することになり、他の業務も滞ります。

2. 専門知識やノウハウの不足

法律の専門用語や慣習を理解しようとすると、予想以上に時間と手間がかかります。とりあえず「ネットで調べて何となくわかったつもり」でも、実際には見落とすリスクがあります。特に免責事項や損害賠償範囲などの重要条項を正確に判断できないと、後々なにかあった時に最悪です…

3. 増える契約書の量と複雑さ

取引先や業務形態が多様化している場合、取り扱う契約書も増えてきます。下請け契約、業務委託契約、共同事業契約など、形式が異なる契約書を短期間で複数チェックするのは大変です。テンプレートがあったとしても、細かい条文の差異や書式の微妙な違いを見逃してしまいますよね。

経営者のリスクと悩み

1. 予期しない損害賠償のリスク

契約書によっては、免責条項や損害賠償の範囲が十分に定義されていない場合があります。そうした点を見落として締結してしまうと、万が一のトラブル時に想定外の損害賠償を負うリスクが出てきます。

2. 重要条項の見落としリスク

契約期間や更新条件、解約条件が不明確なままだと、想定していなかったタイミングで契約が終了したり、違約金が発生したりといったトラブルに発展することがあります。細かい条文を確実に把握しておかないと、「こんなはずではなかった」という事態が起きかねません。

3. 契約トラブル対応の負担

トラブルが起きると、損害はもちろんのこと、経営者の信用にも影響が及びます。弁護士や専門家を後から慌てて探したり、顧客や取引先への説明対応に多大な労力がかかるため、本来のビジネスに注力できなくなるケースもあります。顧問弁護士を常駐させるにはコストがかさむため、中小企業では二の足を踏んでしまうことも多いです。

私も「これで大丈夫か…?」と常に不安を抱えながら契約書を確認していました。でもChatGPTを使うことで、見落としを減らしながらチェックの効率を大幅に高められたと感じています。詳しい方法は後述します。

ところで専門家に依頼した場合の費用は?

1. スポットレビューの料金負担

たとえば弁護士にスポットで契約書チェック(リーガルチェック)を依頼すると、簡単な契約書で3万円~5数万円程度、複雑な契約書では10万円ていどが相場のようです。ぜひお願いしたいところですが、取引案件が多いと出費が重くのしかかります。

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2. 費用対効果とリスクのバランス

「弁護士費用が高いから」と後回しにしてしまい、結果として大きなトラブルに発展することもありそう。自社でチェックするならAIツールでチェック精度を高めておけば、不要なリスクを防ぎやすくなるはずです。ただし大きな取引案件や海外との取引など、複雑でリスクが高い契約では最終的に専門家への依頼が必要でしょう。

3. 専門家活用のタイミングとポイント

  • 新規事業や未経験の契約
  • 大規模または重要な契約
  • 不特定多数との契約
  • 複雑な取引や高額な契約
  • 法的リスクが高い案件

このようなリスクが高いケースでは早めの専門家相談すべき。一方で、比較的標準的な契約内容の場合、AIでひととおりチェックしてから最終判断を専門家にゆだねるという段階的なやり方もアリかなと思います。顧問契約を結ぶか、スポット依頼にするかは自社の経営状況や契約数、リスク度合いによって判断ですね。

中小企業や個人事業主が抱える法務リスクやコスト面での不安は小さくないです。では実際にChatGPTを「法務担当者代わり」にすると、どんなメリットがあるのか。

ChatGPTを法務担当者代わりにつかう

では、実際にChatGPTを「法務担当者代わり」として使うと、どんな効果が得られるのか。私が感じるメリットを3つ紹介します。

時短:2時間が10分に短縮

契約書をチェックするとき、もっとも時間がかかるのが「条文の確認」と「専門用語の把握」ではないでしょうか。ChatGPTは、たとえば次のように使えます。

  • 気になる条文をコピペして、リスクを質問する
  • 専門用語について意味を質問する
  • 契約書全体を読み込ませて、誤字脱字や表現の不整合をチェックしてもらう

こうした作業に不慣れな私は1〜2時間はかかりますが、ChatGPTならあっという間に主なポイントを把握できます。最終的に自分で確認する時間を考慮しても、トータルで10分程度です。

専門家視点を補う助言

ChatGPTに活躍するのは単純な言い回しチェックにとどまりません。以下のように、専門家の視点に近い助言を得られるケースもあります。

  • 想定されるリスクや、世間一般的な条文との比較
  • 「業務委託契約書では、◯◯に注意すべき」といったアドバイス
  • 「A条項とB条項で内容が矛盾しているかも」といった指摘

もちろん、弁護士などの専門家が行うレビューに比べると限界はあります。それでも「どこをどうチェックすればいいのか」という全体像をつかむうえで非常に便利です。専門家に依頼する場合でも、ChatGPTで指摘された箇所を踏まえると、やりとりの効率が大幅に上がると思います。

精神的なストレスは減りました

契約書チェックって、作業時間よりも「不安との戦い」が大きくないですか?

「この条文、間違ってないだろうか…」「何か見落としていないだろうか…」といった不安が、頭の中でずっとループしています。ChatGPTにある程度アドバイスをもらえれば、「複数の目でチェックしている」「自分だけで悩まなくてもいい」という安心感が生まれ、精神的なストレスが減りました。

さらに、私はChatGPTだけではなく、別の生成AI(たとえばClaudeなど)を使ってダブルチェックします。AIによって回答の傾向やチェックポイントが異なるので、複数の視点で見落としを探せるからです。ChatGPTとClaude、両方に契約書を読み込ませて回答を比較してみることで、チェックの精度がさらに向上します。

「AIがどこまで正確に回答してくれるのだろう?」と不安に思われる方もいるかもしれませんが、少なくとも初期段階の確認やリスク洗い出しには十分使えると感じます。

早く試して、チェック精度に驚いてください

私のリアルな契約書を公開するわけにはいかないので、中小企業庁が公開している秘密保持契約書(NDA)の雛形をサンプルにデモしてみます、少しだけ注意と準備の話をします。

AI+人+専門家の役割分担

最初に大事なことを伝えますが、AIに丸投げしてはいけません!

AIを使う目的は、単純な確認作業を大幅に効率化して人的ミスを減らすことですが、最終判断はあくまで経営者や専門家の責任です。AIと人、そして必要に応じて専門家(弁護士・司法書士など)を活用することで、それぞれの強みを活かした最適な契約書チェックになるはず。

準備:ChatGPT有料版の契約

1. 有料版のメリット

ChatGPTに働いてもらうなら必ず有料版(約3,000円/月)を使いましょう。たった3000円で、すべての人類より賢い知能が使えます。無料版をちまちま使うのは時間の無駄でしかない。

有料版(ChatGPT Plus)では、以下のようなメリットがあります。

  • より上位モデル(賢いAI)が使える
  • 入出力の文字数が多い
  • 安定していて応答速度が速い

繰り返しますが、3,000円をケチって無料版を使う時間の無駄遣いはやめましょう。

2. セキュリティ面の考慮

AIツールを使うときに注意したいのが、機密情報や個人情報の取り扱いです。

  • オプトアウト(入力文章を学習データとして使わせない)に設定する
  • 社外秘情報や個人情報が入った部分はマスクする
  • 第三者への開示制限に関する利用規約を確認する

ChatGPTに限らずWeb上のサービスを利用する場合、情報漏洩リスクをゼロにするのは難しい面もあります。常に「公開しても問題ない情報だけを入力する」くらいの意識を持つと安心です。

ChatGPTでの契約書チェック例

お待たせしました。デモです。

1. プロンプトの例

プロンプト(AIへの指示文)はシンプルにしてあります。また、契約書はWordで作ることも多くChatGPTはWordファイルを添付できますが、今回は見た目のわかりやすさを優先して文面を直接貼り付けてあります。

モデルはChatGPT 4o

実際にはプロンプトを何度も変更しながら、安心できるまで聞きまくります。

2. AIの出力例

以下のような出力が即返ってきます。契約に不慣れな私には気づけないレベルの指摘です。今回は元々良くできたひな形を使ったので、大きなミスがあるわけもなく指摘が過剰な気もしますね。

文字が小さいのでクリックして拡大して見てください

簡単ですが、こんな感じです。あとは、ご自身で試してください!

向いていること/向いていないこと

ChatGPTで契約書チェックする場合、向いていること/向いていないことがあります。

1. 向いていること

  • NDA(秘密保持契約)や業務委託契約など、一般的な契約書の形式チェック
  • 基本用語の解説やチェックリストの作成

2. 向いていないこと

  • 最終的な法的判断や取引戦略の決定
  • 新規性の高い契約形態や国際案件など、専門的・高度なリスク判断が必要なもの

3. 人間がやるべきこと

  • 重要な契約リスクの最終判断と、社内外ステークホルダーとの調整
  • 契約の金額やリスクが大きい場合には専門家へ相談するかどうかの判断

契約書チェックが「めんどくさい」のは、機械的な確認が多いからだと思います。そこをAIに任せてしまえば、自分でやるしかなかったストレスから解放されるはずです。ただし、すべてを丸投げするのではなく「節約した時間で、重要な確認にかける時間を増やす」ことを目的にするのが良いと感じます。

もう1人には戻れません(まとめ)

契約書チェックにChatGPT使えそうですか?私は二度と1人で契約書チェックするのは嫌です。一度試してみてください。作業効率が上がって精神的な負担も減って、おどろくと思いますよ。

まずは、ChatGPTのアカウントを作成し、有料版を契約しましょう。で、モデル契約書で実験です。使い方は、誤字脱字などのチェックから始めて、用語の質問や要約の指示、リスクの洗出しと条文の修正案あたりがオススメです。

くれぐれも、以下は注意しましょう。

  • AIは補助ツールである=最終判断は経営者・専門家の責任
  • オプトアウトを確認し、個人情報、機密情報は入力しない
  • 最終的には人(専門家、経営者)が判断

契約書チェックという単調で神経を使う作業は、中小企業や個人事業主にとって大きな負担となりがちです。しかし、ChatGPTの活用によって格段に効率化できることは、私自身の経験からも実感しています。AIに任せられる部分は任せてしまい、経営者としてより重要な意思決定や戦略立案に時間と労力を使えるようになるのは、大きなメリットだと思います。

もし同じような悩みを抱えている方がいらっしゃったら、ぜひ一度試してみてください。一度ChatGPTでのチェック体験を味わうと、その手軽さとスピード感から、もう1人には戻れなくなります。

今後もツールは進化し続けるはずなので、今すぐに導入し、使いこなしながらスキルを磨いていくことが、より強い経営基盤を築く一歩になるはずです。

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この記事を書いた人

中野 裕のアバター 中野 裕 なかの情報技術 代表

なかの情報技術代表・ITコーディネータ。2002年に上京。多数の金融機関でシステム開発を経験した後、札幌にUターンして独立。経営管理(管理会計)、受注管理、購買管理、工場等の設備管理など、独立後は広範囲の案件に携わる。「ビジネスとITをつなぐ」ために、両者のコミュニケーションギャップを解消するため走り回ることも多い。

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